地元民だけが知っている、
とっておきの石巻。

STORY.6

26.April

地元民だけが知っている、
とっておきの石巻。

宮城が誇る「松島」から、電車に揺られること約50分。
海を眺めながらたどり着いたその場所には、手つかずの漁師町ならではの風景が残っています。

まだ知られていない
魅力を訪ねて

「グングングン」と車のエンジンがうなりを上げる。車が2台すれ違えないほどの細く急な山道を登っていくと、目の前が開け、見渡す限りの水平線があらわれます。

「馬っこ山」という名前で親しまれる「トヤケ森山」は、360度の大パノラマで石巻を眺められる場所。夕暮れになると、ぽつりぽつりと市街地の明かりが灯り始め、緩やかに流れる北上川にオレンジ色の街灯が揺らめく幻想的な景色が広がります。

あまり観光地としてのイメージが強くない石巻ですが、実は地元の人しか知らない隠れた名所がたくさん。そこで今回は、木の屋の社員がおすすめする「石巻の好きなところ」を巡ります。

新鮮すぎる魚を、
お腹いっぱい食べる

「石巻港」の他に、「女川港」「鮎川港」と3つの港を持つ石巻。それぞれの港で毎朝様々な三陸の魚が水揚げされるので、石巻で地魚を食べようと思ったらどこに入っても満足できること間違いなし。

築100年を超える古民家居酒屋「喜八櫓 きた道」もその1つ。豪華な刺身の盛り合わせを目でも舌でも楽しめます。囲炉裏の火で炙った旬の魚を、ほくほくと丸かじりするのもたまりません。

石巻魚市場の横にある漁師御用達の食堂には、海鮮丼から生かつおの刺身まで揃っているし、買った魚に白飯と味噌汁をつけてその場で食べられる魚屋もあります(季節によっては味噌汁にげんこつ大の白子が入っていることも!)。

魚が新鮮なのは当たり前。魚を知り尽くした料理人が腕をふるう、旬の魚を一番おいしく食べられる料理に舌鼓を打つのが石巻流の楽しみ方です。

地元の食材で作る、
石巻だけのパン

素晴らしいのは魚だけではありません。地元でとれるみずみずしい野菜も石巻の自慢です。

石巻駅の近くに店を構える「Ficelle パン工房」では、石巻の野菜を使ったパンが大人気。「自分が食べたいパンだけを毎日楽しく作っています」と笑うのは、パン職人の高橋さん。国産の小麦粉だけを使った天然酵母のパンは、噛めば噛むほどやさしい甘みが口の中に広がります。
店内ではパンの他に、地元の野菜がごろごろ入ったカレーやスープもいただけます。もちろん全て高橋さんの手作り。「農家さんが毎日野菜を持ってきてくれるんですが、そのときにおいしい食べ方を一緒に教えてくれるんです。これは煮たほうがいいとか、生でもいけるとか。なので、それを聞いてからその日のメニューを決めています。」

毎日14種類ほどのパンを作るそうですが、木の屋の缶詰を使ったパンが登場することもあるとか。「さばの水煮缶を開けたときの綺麗さといったら!初めて見たとき、すごいと思って。食べても、もちろんおいしいですよね。さばのジェノベーゼとかいろいろ作ってみました。すぐ調理に使えて、ちょっと高級感のあるパンにも合うし。」

旬の素材の一番おいしいタイミングをいかした商品を作りたい。その思いは、石巻の「ものづくり」に共通する精神なのかもしれません。

春を感じる
ピンクの日和山

木の屋社員に圧倒的な人気を誇る日和山。「高いところからの眺めが良い。桜の花がきれい。」「桜の花見時期は毎年行きます。おでんやラーメンを食べて春を実感できるから。」さすが桜とつつじの名所とあって、人気の季節は春。

山頂には大きな鳥居があり、その足越しに石巻の海とまちが一望できます。海を向いて厳かに佇む鹿島御児神社には、勝利の神として職業繁栄を守る神のほか、悪疫除けの神、安産の神、鬼門除けの神、海上安全の守護神などそうそうたる神々が祀られているそう。
桜の海の向こうに、キラキラと光る太平洋。潮風と花の香りが混じった春の風が吹きぬけます。

海、魚、野菜、そして人。石巻には一見特別なものはないかもしれません。
でも普段身の回りにあるもの一つひとつが、石巻では初めて出会うもののように色濃く感じられます。
「すべてが素のままでいられる場所」ともいえる石巻。
松島で美しい眺めを堪能したあとは、石巻の空気を吸いに、ちょっと足を伸ばしてみるのも旅の醍醐味かもしれません。

取材協力:
◆喜八櫓 きた道
宮城県石巻市北境字久保68
0225-24-9869
http://kitamichi.yamanoha.com/

◆Ficelle パン工房
宮城県石巻市駅前北通り2-12-17 1F